くらしのうみ

書くのが好きな人の、たいしたことない大事な日々と人生。

有限の力で好いていく

とりたかったチケットの抽選に応募するのを忘れてしまった。

いわゆるオーケストラコンサートというやつで、演目はクロノ・トリガー。なんと三十周年らしい。

そうかあ、もうそんなになるのか。夢中になったのが中学生の時だったから、そりゃあそうなるか。

クロノ、サガ、聖剣、FFのオケコンは死ぬまでにどこかで行っておきたい。

とは思っているのだけど場所が東京だったから「ほんまに当たったらどうしよう!」と正直躊躇したのもあった。

そこから「当たったら腹括って行こう!」と覚悟を決めたのにうっかりと、あろうことかクロノ・トリガーをやりながら寝落ちして日付変更線を越えてしまったのだった。うっかりすぎる。

でも「なんだかんだ追加で大阪にも来るんとちゃうか? しらんけど!」みたいなちょっとイヤラシイ気持ちもあったりする。

あったらあったで「当たれ!!」と神に祈るし、なかったらなかったでしゃーない。

 

好きなもののために新幹線に乗って上京する、か。

「推し」を応援するために全国の競馬場を飛びまわっていた頃みたいだなあ。

無限の力がわいてきて、どこへでも行けたし、なんでもできた。

嫌いになったんじゃなくて信じられなくなって、嫌になったんじゃなくて受け入れられなくなって、わたしは人生を懸けて好いていた趣味をやめた。

離れる理由に「嫌」以外の感情があるだなんて、夢中だった頃には想像もつかなかった。

肉体に力を与えるのは、心と気持ちだ。

だから今とこれからはあんな力がわいてくることはないだろう。

もはや力も心も気持ちも失ったのだから。

……なあんて思っていたのに、うっかりとオケコンのために上京するかもしれない計算をしていたのだった。

こないだだってジロ・デ・イタリアの優勝トロフィーを見るためだけに万博のイタリア館に四時間並んだしなあ。

極端だ。

そして単純だ。

だって、心と気持ちに有限の力を与えられたんだ。

わたしという人間は、好きなもののためにはそこそこのことができるらしい。

まだまだそんな自分でいたい。